ひみつの箱
少し重くて、少し暖かい、童話。
とても面白かった。
事故で体の成長を12歳のまま止めてしまった男が、わけあって小学生として暮らしていて、その彼と、その周りの子どもや大人の、それぞれの人生と秘密を丁寧に重ねていきます。
もともとこういう短編を積み重ねていくようなスタイルがわたしは大好きなので、そういう贔屓目もあるかもしれないですけど。
決して明るい話ではないんだけど、暖かな空気が全編に流れていて、“少し重くて少し暖かい”独特の読後感があります。
堀田あきおによる絵の力は意外に大きいかもしれません。
唯一のダークサイド的キャラクター、マユに対するキョーコ先生の一言がいい。
「大人になるのも悪くないってあなたに言えるように」
「私が先に生きておくね………」
個人的にはイミシンのエピソードが印象に残っています。
この時代に、“生の実感”はある、と言い切り、感じさせる作品。
確かにそれを描くには、荒唐無稽な童話的設定が必要だったのかもしれないけど、そういった“童話”と、2006年の日常にしっかり根ざした丁寧な描写が高いレベルでうまくいっているところが、心に届く作品になった理由なのかなあ、と思います。
いい作品だと思います。
とてもマンガという表現の強さも感じました。
最後の夕暮れの校庭が美しい。そしてそれは、わたし達がどこかできっと見ている光景。
そしてそれは、生の光景。