for the rest of my life

ex.ニジの空間(関心空間)

COCOON

今日マチ子がこちらにも扉を開いてくれました。

これまでも高く評価をされてきた今日マチ子の叙情的な作品群は、残念ながらわたしには繊細すぎてややついていけない部分が多かった。

きっと作者本人やそれを愛する読者にとっては、十分に心を振動させ、世界を揺さぶる作品なのだろうが、わたしの感受性ではちょっと受信しきれなかった感を強く感じさせるものだった。やっぱりちょっと、読んで敗北感を感じてしまうものは大好きにはなれなかった。

そんな彼女が針をこっちにぐいと振ってくれた。

彼女の、水中から太陽を見上げるような叙情性を、太平洋戦争、その中でも沖縄戦、さらにひめゆり学徒隊という極めて激しい色彩を持つ出来事に真っ向からぶつけて描き上げてくれた今作は、わたしにとってとても強い印象を残す素晴らしい作品になったように思う。

これまでわたしには大きく響いてこなかったものが、その叙情性と不可分に結びついている少女性なのではないか、と気づかされたのも、この題材を選んでくれたことによるのではないかと思いました。

きっと少女性というものの持つ残酷さに、わたしは耐えられないんだ。がんばるけど。(笑)

戦記物としても非常に読み応えがあり素晴らしいと思います。

(詳しいわけではありませんが、義務教育プラスアルファでわたしが感じている)太平洋戦争の、誰もが他人事のようにあれよあれよと戦争に突き進み、そのしわ寄せをまた他人事のように最も弱い存在に背負わせていき、ついには全体の戦局が破綻してく様、そしてそれが最も象徴的に現れてしまった沖縄戦の、薄暗く、根の深い悲劇を、しっかりと描いているように感じました。

もう勝手に生き延びて下さい、と全てを捧げて尽くした国から言い渡された時、少女は空想の繭にくるまるしかなかった。

こんなに薄汚い悲劇はない。

こうした作品が1980年生まれの生粋の叙情派の手で描かれたことに、様々な意味で感動します。

できれば、これからもこういう作品をたまには描いてくれたらいいな、今日マチ子、と思います。

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