虐殺器官
“想定外”という言葉が妙に目立っている。
ホリエモンの頃から目立ってきたのか。
この震災で更に“想定外”が世の中で踊っている。
しかし、そんなに想定は甘かったのか。
しかしそれほどまでに、わたし達の想像力は足りなかったのか。
否。
そうでないことは、実はみんなわかっている。
わかっているよ。
想像力が足りなかったのではない。
目をつむったのだ。
輪郭の曖昧な“いつかの何か”より、今進み続けるために。
想像される誰かの不幸の可能性より、自分が欲しかった何かのために。
ただ、目をつむったのだ。
そうやってわたし達は生きている。
誰もが。
わたしも。
あなたも。
「人々は見たいものしか見ない」
目をつむられたもの達の反逆を感じるから、この震災は恐い。
『虐殺器官』
そうやって目をつむって無いことにしているものを、目をつむることで成り立っている世界の欺瞞を、このフィクションはクリアに見せつける。
驚くべき作品だと思う。
透明に、徹底的に、見せつける。
だからこの小説を読むと、あなたの小さな幸せがとたんに呪われたもののように思えてしまうかもしれない。
あなたの世界を変えてしまう恐ろしい程のインパクトがある。
衝撃的なインパクトと深い深いダイブ。
世界に頻発する虐殺の影に見え隠れする1人の男。それを追う米特殊部隊員。その驚くべき目的とは。
リアリティあふれるSF的小物の数々。冷静な筆致。わかりやすい筋運び。
最後まで目が離せない素晴らしいエンタテインメントでもあるのが衝撃的。
不謹慎ですが、夭折さもありなんと思える程の圧倒的フィクションです。このままこういう作品を出し続けられていたら、ちょっと小説の世界は変わったのじゃないかしら、と思わされます。
ちょっと最近では圧倒的面白さでした。
あなたの幸せを揺さぶってしまうかもしれないけども、ぐらぐらしてしまうかもしれないけれど、わたし達はどうしたって忘れていくんだから。
読まないのはもったいないかも。
しかし今さらのご紹介。わたし大体いつも3年くらい遅い。
気づくとRumeさんが紹介したものを遅れて紹介してること多いよね。(笑)
ごめんなさい。うっすら気づいてた。(笑)