天才 柳沢教授の生活 34巻
“天才柳沢教授の生活34巻は自分で読み返して見ても相当内容力入ってます。皆さんに是非読んでもらいたいです。34巻目だけでもいい。”
とツイートした34巻。
なるほど、凄い。
同時にわたし自身がここ数巻で感じていたことが間違っていなかったのだな、と思えました。
29巻、30巻あたりからでしょうか。
この作品に、老いと死をちゃんと描こうという確かな感触が漂い始めました。少なくともわたしにはそう思えた。
それはもうお話に限らず、そのペン運びにいたるまで徹底して、相当自覚的に、そのことを目指し始めているな、と感じました。
そしてそのことは極めて高い完成度で成し遂げられていて、
作者は、遂に教授の死を、描くのかもしれない。
描く覚悟を決めたのかもしれない。
と、自分を不安にさせる程のものでした。
そして34巻。
それはもう、誰が読んでも明白と言っていいくらい、明確にそのことに舵を切ったのが感じられる巻になっていると思います。
作者が実際彼の死を描くのか、また描かない形で物語を閉じるのか、それはわたしには分かりませんが、彼の人生の着地を伝える局面に物語が入ったことを認めざるを得ない巻になっている。
柳沢教授の死に、わたし達は何を思い、その先どう生きるのか。
どれだけ心が揺れるのか、見当もつかない。
幸福な不安。
これ程までにわたし達の人生に近しく寄り添ってくれた彼。
もう、マンガのキャラクターを超えた、“近しい誰かの死”に限りなく近い感情をわたしに呼び起こしてしまうに違いはないのだ。
それはもう、1つの人生でしょう。
本当の意味で、1人の人間の人生を描ききった希有なマンガが誕生するかもしれません。
期待と、幸福な不安。
本当に素晴らしいマンガだと思う。