失踪日記
別に熱心なファンではないんですけど、本屋で一瞬我が目を疑いました。
「吾妻ひでおの新刊!?」
世の中で大きく「不条理マンガ」という言葉が踊った10年くらい前のブームの頃というのは、やっと世間が吾妻ひでおに追いついてきたということだったんだろうな、と思えるくらい、彼はかなり早くからかなり本当に不条理な味の作品を発表していました。(彼のマンガがあのブームの頃の“不条理”にあてはまるかといえば違う気もしますが。)
わたし自身は実はあんまり作品を読んでいないので、紹介めいたことを書けるアレではないんですけど、読んだ数少ない作品が自分に残したインパクトは大きかったのです。
で、「ずっと見かけないけど、どうしてるんだろう…。」と思っていたんですが、
こういうことだったんか!
2回の失踪、アル中、入院…。
その頃のことが自伝的に描かれています。
自伝的な作品なので、その不条理感は当然SF・ファンタジーものと比べれば後退していますが、そのゆるい味と不可思議さは未だ健在!大健在!
かなり面白く読めました。
ていうか、ここまでの体験をこの味で面白く読ませるというのは、スゴいと思います。
しっかりと吾妻ひでおの新作なのです。
わたしはホームレスにはなりたくない、と思いました。やはり人生に屋根は必要です。
同時に甘美に人を引きつける世界でもあるのは確かですが。
つげ義春、中島らものこういった系の著作が好きな方は面白く読めるのではないでしょうか。
でもあの“不条理マンガブーム”の頃にシーンに彼がいたら、彼の一般的な知名度も大きく変わっていたと思うのですが(それがいい悪いという話でなく)、その頃ホームレスやってたりしてたんですね…。
個人的には警察のマンガファンに色紙描いたくだりが最高に笑えました。
あとPOISON GIRL BANDが好きってのは、作風をかんがみて、「なるほど納得」な感じ。わたしも大好きなのでうれしかった。