大阪ハムレット
毎度似たような人情ものばかりですが、やはり良かったので。
森下裕美の最新刊。
時々覗いているマンガ評論系のブログで、「これが森下裕美の絵の完成形か。」と紹介されていて、とても興味を持ち、読んでみました。
大阪を舞台に、様々な事情と感情を抱えた人達の日々をやさしく描きます。
じんと涙がにじむ好短編集。
どのお話も良かったですが、『放浪息子』を思わせる、女の子になりたい男の子、ヒロ君のお話、年上の女と男子中学生の恋愛模様を描いたマー君のお話が印象に残りました。いや、アイコさんとヨシ君のお話も…。やっぱりみんないいなあ。(笑)
ヒロ君も、マー君の彼女の由加ちゃんも、アイコさんも、その友達も。それぞれ軽くない事情を抱え奮闘し、泣いて、笑う。
森下裕美の絵というのは、代表作の『少年アシベ』がそうであるように、かわいい。極めて非リアルな線と言えると思います。この作品でも、基本その路線の絵なのですが、しかしかなりの強度を持って、リアルにキャラクターそれぞれの事情を読者に突きつけてきます。
“森下裕美の絵の完成形”とは上手いことを言ったなあ、と感心します。確かにそういう気がします。
『少年アシベ』も、極めて“マンガチック”な絵でありながら、描かれる人間はかなりのリアリティを感じさせるものでしたが、ここでついにその味が大輪の花を咲かせた感じ。
完成した彼女の絵は、強いぞ。
プロのマンガ家という言葉が頭をよぎります。
強いぞ。