for the rest of my life

ex.ニジの空間(関心空間)

おもいでエマノン

実は鶴田謙二のマンガをわたしはさほど好まない。

別にKWを立ててもいる通り、鶴田謙二には抗しがたい魅力を感じつつも、そのマンガ作品に対しては実は全く熱心な読者ではなかった。

彼のマンガは、わたしにとってはマニアック過ぎるし、未整理でとても読みにくい印象だし、本人がいかに“マンガ家”のスタンスを大切にされていようとも、わたしにとっては“イラスト”の人なのだった。

そして原作のエマノン・シリーズも読んだことがないわたしにとっては、この単行本は完全に“引力に抗しきれず買ってしまった”感じの単行本だったわけです。

しかしこれがとても良かった!

こう言ってはなんだけど鶴田謙二、原作者がいた方がいいマンガ描くのではないかいな?(まあ、あくまでニジ的には、ということだけども。)

原作のテイストは知らないわけなんだけれど、SFとしては相当ライトです。

知的な刺激はちゃんとあるけども全然難しくない。

“僕”とエマノンの会話と関係と雰囲気。その中心にSFが、くらいな感じ。

とにかく味があります。

鶴田謙二、こんなに味のあるマンガを描くのだなあ、と感動しました。

細かいけれど決して精細とはいえないタッチ、だけどじんわりしみいるタッチ。彼のモノクロにこんな良さがあるとは。

きっと原作付きということで、いつもはあまり感じられない隙間感があったことが彼のこういう味を引き立たせたのだろうと思いました。また、彼の絵の持つ味にフィットした原作であるのも確かなんでしょう。

気が抜けてるようで、本当に気を抜いて描いてるところは1箇所だってないんだろう、と思わせます。

いや、しかし、なんだって彼の絵はこんなに魅力的なんだ。

カラーで収録されてる「エマノンのおもいで」やカバー、表紙も当然圧巻。最高。

装丁もいいです。あえてチープな紙質にしているであろう本文用紙も非常に心地よい。深い理解と愛がある気がします。表2に隠れたお楽しみ有り。(笑)

いや、鶴田謙二、モノクロマンガも見直しました。これはいい本です。

結露を拭いた窓ガラスの描写はびっくらこいた。そしてそれは確実に“必要な描写”であることの凄さよ!

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