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ex.ニジの空間(関心空間)

2005年のシゲタカヨコ

『SIGHT』VOL.23所載のイラストです。

わたしは、ことマンガに関しては「これを読むべきだ」みたいな言説が好きではないので、そういう特集の雑誌やムック本などにはあまり興味が無いのです。ただ最近出た『Quick Japan』は岩明均のインタビューに惹かれて買って軽く凹んだのですが(ニジの日記参照)、その時にこの雑誌もマンガ特集だと教えられて今日ちょっと手に取ってみたわけです。

記事はまだあまり読んでないんですが、1枚の描きおろしのイラストが衝撃的でした。

それが安野モヨコによる『2005年のシゲタカヨコ』です。

この雑誌、この1枚のために買っていいと思います。

言わずと知れた『ハッピー・マニア』の主人公、シゲカヨの現在の姿、という企画物的なイラストなんですが、『ハッピー・マニア』の続編くらいのインパクトと意味のある1枚だと感じました。

ニジの感じたままを言わせてもらえば、うつろな抜け殻みたいなシゲカヨが描かれています。

そしてその印象は、『ハッピー・マニア』を読んだ時の自分の感覚ととても近いものだったので妙に納得したのです。

ハッピー・マニア』はとても鋭いマンガだったと思います。

ちょっと信じられないくらい鋭く現代の日本に生きるわたし達を描いたマンガだと思います。

それはえぐるくらい鋭いので、簡単に何回も頁を開けないマンガです。読むのがつらいくらい鋭い。

どこまでいっても無くならない欠落感と渇き。それをひたすらに潤そうとするシゲカヨの姿は、ハイテンションなギャグマンガのようにも語られていましたが、実は痛々しくて見ていられない姿で、それでもあのラストをむかえてしまって、そこには「“ハッピーの行者”みたいな彼女はどこまで苦しまなければいけないんだ」と窒息感に近い感覚を感じていました。

その感覚は正しかったのかもしれない、と今日思えたのです。

安野モヨコは自身のHPでこのイラストに触れていて「あまり思い入れはない」と言っているのですが、結構真剣にこの1枚を描いたのではないのか、と想像します。『ハッピー・マニア』の続編くらいのテンションで。

その1枚の重さは、江口寿史の『2005年のひばりくん』と比べればはっきりと分かるように思います。

こんな1枚絵、いつ単行本に収録されるかわかりません。もしファンなら買って損はない1冊です。

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