イムリ
ほの暗く淫美な三宅乱丈の世界が大きく花開きそうな、スケール感のある大作(になるんでしょう)。
痛かったり暗かったり落ちたりするマンガは怖いビビリのニジですから、三宅乱丈の作品というのはいつもおっかなびっくり。
ギャグマンガである『ぶっせん』すら途中でなんか痛くなっちゃって放置中だったりして。
なので多くは読めていないのだけど、彼女の作品はどこか一貫して“精神の陵辱”といったものを描いているように感じます。
そしてほの香る、もしくはむせかえるような、退廃の甘い芳香。
彼女のそういう強く生身にひびかせる個性は、強みでもあり、弱みでもあるのでは、と思っていました。
多分例えば『ベルセルク』みたいながっしりとした“物語”を描くのは苦手なんではないか、と思い込んでいたのです。
いや、待て。
なんたること!『イムリ』が面白いぞ!
2つの惑星を舞台に、古代から続く民族と階級の闘争、策謀、権力と欲望の物語。
その中心に彼女のテーマ(だとわたしが思っている)“精神の陵辱”をはっきりと打ち出したかのような「侵犯術」という超能力をすえ、これからもさらに複雑に絡まり合いもつれあうだろう人間関係を真っ向勝負で描いていきます。
強く生理的な持ち味を持つ作家が、本格的な物語を描いていくこの作品はもしかしたら凄いものになるやも。
楽しみに読み進めたい作品です。
単行本各巻にその世界の社会制度や用語を説明したペラがついている通り、やや難解なマンガですが、立ち読みですますにはややつらいかな、程度かと。
逆に物語の構造的には単純に展開しているように思えるので、これからさらに複雑に入り組んでいくと面白いかな、と思います。
ニジ的にはずっとぐじゅぐじゅと気になり続けていた作家さんなのですが、三宅乱丈、この作品で大きな実をつけるかもしれない。
多分代表作になるのは間違いないんではないでしょうか。