愛すべき娘たち
立て続けによしながふみで。興味がわいて少しづつ読んでいるもので。
このマンガは凄い。
初版2003年かあ…。4年近く読まずにいたのは悔やまれる作品。
そんなわけでこの作品は4年前には世に出ていたわけだけど、少し前にKWにした最近の作『フラワー・オブ・ライフ』と続けて読んでみて、そしてわたしがこの2作品しかちゃんと読んでいないことを考え合わせても、
よしながふみは2007年現在の最重要作家の1人と言っていいと思います。
そのくらい衝撃でした。
このマンガは凄い。
ギクリとする。
心からギクリとする。
多分残酷なほど本当だから。
この“本当さ”の時点でまず世にある幾多の生温い娯楽作と大きく一線を画しています。
困ったことに意外とこういったレベルで人間の本当の感情や感覚を描けている作品というのは、それが狙って外したのか、はなから狙ってないのかは様々でしょうが、少ない気がします。
そして、その読ませ方がかなり生理的。
「男に理解できるのだろうか」「男には読ませたくない」なんていう感想も目にしたけども、多分この作品の“感覚”が持つ生々しさがそういった感想を抱かせるのでしょう。
とにかくズドンとくる。
そういった読ませ方で、さらにこの作品は大きく記憶に残るものになっているのだと思います。
しかしだ。
さらに、ただ生理的なだけじゃないところが凄いのだ。凄いのだ。
『フラワー・オブ・ライフ』の時も書いたのだけど、この作者はかなりドライだ。いや、“乾いた”視線というのでもちょっと言葉が違う気がする。透明な視線?天上からクリアに、吐き気がするくらいクリアに眺めている感じ。そういう視線が徹底している。
人間の本当の感覚を、かなり生理的に、その上かなり客観的に整理した見せ方で読ませるのだ。
これはもの凄いことだと思うのだけど。
ああ。このマンガは凄い。
とにかくここまで細かく人の心の機微をマンガとして表現できる作家をあまり知りません。
例えば作中の、器量の良くない母が、器量良しの我が娘のちょっとした仕草に心を少しざわめかす感じ。
かなり驚きました。こういうレベルの心の機微をここまでの説得力で伝えてくるのは、凄い。
かと思えば、
「分かってるのと 許せるのと 愛せるのとは みんな違うよ」
なんていう、しっかりした“言葉”もちゃんと。
是非。
男が読んでも面白いと思います。